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日本ハンドビューティー協会代表 加藤由利子さん インタビュー|お客様にとっての価値を伝えられるように

日本ハンドビューティー協会代表 加藤由利子さん。ネイルサロンでの経営を経て、現在、日本初の手のケア専門資格『ハンドビューティー』の啓蒙と、サロンオーナーの教育に力を入れています。10年以上サロンを経営してきたからこそ分かる経営の重要性についてお聞きしました。

 

 

起業したばかりのサロンオーナーは「投資と回収」の考えを持っていない方が多い

――開業したサロンオーナーさんと話をする機会が多いということで、実際に話をされてみてどういう印象をお持ちでしょうか?

店舗をオープンしてから集客に悩むサロンオーナーが非常に多いです。

なぜなら、今までは施術(技術)ばかりに力を入れてきた方がほとんどだからです。

 

あとは、小規模の店舗でサロンを経営しているオーナーの場合、お金(収支)のことが分かっていないと感じます。

「月間どれくらい売上を上げたいですか?」とこちらから質問すると
「20〜30万円です」と答えるのですが、施術メニューの料金が低く、1時間あたり3,000円になっていたりします。

すると、目標の売上を達成するために毎月どれくらいのお客様を集客しなければいけないのか、ということが分かります。

さらに、家賃等の固定費やスタッフの人件費を踏まえると、最低限上げるべき売上はいくらかが分かるのですが、そこまでイメージできていないサロンオーナーの方が多いです。

 

また、起業したばかりのサロンオーナーは「投資と回収」の考えを持っていない方が多いです。

例えば、受講料が10万円の講座と100万円の講座があったとして、どちらの講座を受けますか、と質問すると、起業したばかりのサロンオーナーの方はみんな「10万円の講座」を選びます。

しかし、私だったら、金額が安い講座よりも高い講座の方が効果が高い内容であると考え、どのくらいの期間で効果が出て回収できるのかということを考慮した上で、「100万円の講座」を受けます。

大学の授業料は親が出してくれるから、回収しようという気持ちが生まれないですよね。
でも、自腹で授業料を払ったとしたら、何年で払った分を回収できるか考えると思います。

その考えを持つことが「経営」です。

 

 

お金をかけてでも外部の力を借りる必要がある

――加藤さんご自身では「投資する」といった経営的な考え方をどうやって身につけたのでしょうか?

店舗をオープンしてから集客に悩むサロンオーナーが非常に多いですが、私は、開業するために必要なことを事前に調べ、開業までのスケジュールを立てていました。

すると、開業するまでに多くのことをやらならければならないと分かり、それを全て自分一人でやろうとすると予定していた開業日に間に合わないので、お金をかけてでも外部の力を借りる必要があるということが分かりました。

 

——開業前にスケジュールを立てないオーナーさんも多いと思いますが、なぜスケジュールを立てようと思ったのでしょうか?

私は何事も計画を立てる性格で、ベストを尽くせないのが嫌なんです。

学生時代、ちゃんと勉強をしていない結果、悪い点数を取る自分のことが許せなかったのです。

「あのとき、もっとやっておけば良かった」と思ってしまうのです。

できたのにやっていなかった、ということに対して悔しく思った経験があったので、事前に計画することが大事だという考えが身に付きました。

 

——実際は計画どおりに物事が進まないこともあったかと思います。そのときはどうしていましたか?

お金をかけるしかありませんでした。

スタッフを採用したときも、具体的な方法が分からなかったので、お金をかけて大手企業へ依頼して採用募集をかけていました。

予定以上の出費をしてしまったこともありました。

 

——例えばどういう物を買われたのでしょうか?

ホームページにはかなりのお金をかけましたが、それだけではなく、ホームページを作ってくれた会社とは別の会社に依頼して、ネット予約システムも作ってもらいました。

ホームページや予約システムの妥当な金額が分からず、システム会社のツテもなかったので、知り合いに紹介してもらった会社へ依頼するしかなく、相当お金をかけて作り込んでいました。

予約システムについては、予約するときにどういう機能が必要なのか導入前からイメージはしていたものの、実際に現場で使ってみると、想定と違った、ということもありました。

でも、既に多額な費用をかけて作ったネット予約システムだったので、これ以上費用をかけることができず、システムを変更するのではなく、システムに合わせて業務を変えるしかありませんでした。

ホームページや予約システムに多額な費用をかけると、後で変更することが大変です。

導入前の時点から、ある程度費用の相場感を分かった上で、信頼できる会社へ依頼できれば良かったと思います。

 

 

 

「自分にないものばかりに目を向けるのではなく、あるものに目を向けなさい」と言われた

――加藤さんが開業された後、ネイルサロン経営から今に至るまでのお話しについてもお聞きしたいと思います。まず、なぜネイルサロンを開業しようと思ったのでしょうか?

元々はOLでしたが自立する女性を育てたい、という思いがありネイルサロンを起業しました。

 

 

——その後、サロンオーナーの教育という分野にも携わっていますが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

当時は自分が未熟だったこともあり、ネイルサロンでは目標を達成することができませんでした。

 

約10年間経営してきたネイルサロンを止めるとき、会社員を続けて満足した生活を送っている同世代と自分を比較してしまい、自分が起業したことを後悔し始めていました。

でも、私が信頼する方から「自分にないものばかりに目を向けるのではなく、あるものに目を向けなさい」と言われたときに、「これだけ人に支えられて10年間続けられる人はなかなかいないんだ」「自分自身の経験をもっと還元すべきだ」と思いました。

 

私は、ずっと自分を犠牲にしてきたと思っていましたが、犠牲ではなくみんなに助けられてきたのだと分かったときに、「教える」という立場を取りたいと思いました。

自分で起業する方をサポートしていきたいと思ったのです。

 

今の私だったら自立する女性を育てられるのではないかと思っています。

 

 

 

お客様にとっての価値を伝えられるように

——そういう経緯があったのですね。

次に、ネイルサロンを経営されていたときのお話も詳しくお聞きしようと思います。ネイルサロンで成功した事例を教えていただけますか?

 

ネイルサロンでは30分2,980円というメニューを出しており、金額を安くして数を多く取るという方針にしていました。

ほとんどのサロンオーナーさんは相場から外れない料金設定をしますが、それではインパクトがないなと思ったんです。

ネイルサロンだと2万円が平均単価だったので、それを約10分の1である2,980円にすればインパクトを出すことができます。そうやって目玉メニューを作ることで、集客は上手くいっていました。

 

ただ、今になって分かることは、高収益のメニューも入れたほうが良いということです。

 

例えば、サロンで1時間5,000円のメニューにすると、1日で最高3万円くらいしか売上を上げることができません。スタッフがたくさんいればそれでも良いかもしれませんが、自分一人で運営している場合は、どれだけ頑張ってもサラリーマンの給料に届くかどうか……ということを分かっていない人が多いのです。

だから高収益・高単価のメニューが必要です。

 

自分の目標から逆算してメニューの料金を設定することが重要になります。

 

あとは、メニューを作るときには「誰に対するメニューなのか」ということを考えていました。

ターゲットの設定、ペルソナ(※)の設定が絶対必要です。

※ペルソナ:製品やサービスのユーザー像を仮想の人物として定義したもの。

 

 

——他に工夫すべき点はありますか?

ホットペッパービューティーに掲載されているネイルサロンのページを見ると、「60分つけ放題」「定額制」といったメニューや料金に関する内容ばかり載せている店舗が多いです。

 

しかし、お客さんにとっては各店舗で何が違うのか分かりません。

 

サロンオーナーの多くは、インパクトのあるメニューを出す、ということばかりにこだわっていますが、大事なことは「お客様がどう変身できるのか?」ということです。

 

例えば、「爪をキレイにすることで、同窓会へ行っても恥ずかしくない」ということであれば1万円を払うけれど、ただ爪をキレイにするだけであれば2000円で十分、という考えを持つと思います。

お客様へ与えられる未来、お客様が実現できる未来、を想像させてあげることで、お客様にとっての価値を伝えられるようにならないといけません。

 

——お客様のことを深く理解することが大事なんですね。実際にはどうやってお客様のことを理解できるようになったのでしょうか?

自分で店舗を立ち上げたときに、トライ&エラーをしながら勉強しました。

ホットペッパービューティーへ掲載したり、SNSで情報を発信すると、お客様の反応がよく分かります。

ニーズがないものには全く反応がないので、どういったものにニーズがあるのか、自分でやりながら見つけていきました。

 

 

——お客様と会話した内容や、お客様のご要望など、「顧客情報の管理」が必要になると思いますが、ネイルサロンをされていたときはしっかり情報を管理されていたのでしょうか?

顧客管理はあまりできてはいませんでした。

既に多くのお客様を抱えていたので、途中から顧客情報を整備することが難しかったため、システムを使った顧客管理はやっていませんでした。

あとは、そもそも蓄積したデータをどうやって分析すれば良いか分かっていませんでした。

 

 

——データを使うということやマーケティングについて学んで実践するというのは難しいですよね?

日々の業務に追われてしまうので、どうしてもそこまで手が回りません。

そもそも新しい分野について勉強する、という意識が薄い人が多いかもしれません。

経営を勉強するのは嫌だけど、技術を勉強すれば何とかなると思っているサロンオーナーが多いです。

でも、勉強した技術を活かすためには経営スキルが必要となります。

当時は私もセミナーへ参加したこともありましたが、私にとって必要なことは1年後の売上よりも今月や来月の売上でした。

今月・来月のお客様を集客しなければならない、という不安がありました。

 

 

——ネイルサロンを経営されていたときは、どうやって集客をされていたのでしょうか?

当時はホットペッパービューティーへ掲載するだけで集客できていました。

でも、今はホットペッパービューティーへ掲載してもお客様は安いサロンへ行ってしまいます。これから開業するならホットペッパービューティーに頼るのではなく、どうやって他店舗と差別化するかということが大事です。

また、ホットペッパービューティーでは他店舗と差別化できる内容まで伝えることが難しいため、それとは別に自身のメディアを持つことも重要です。

 

 

——他に苦労されたことはありますか?

元々はOLだったので、同じサロン業界内での横の繋がりがなく、情報が入ってこなかった点です。

店舗経営が上手くいっているサロンオーナーとの繋がりがあったら良かったと思います。

 

 

——自力で勉強するしかなかったんですね。

お金と時間をかけたくなかったので、困ったときはネットで調べるか、知人に紹介してもらうか、のどちらかを取っていました。

今振り返って思うと、しっかりとお金を払ってセミナーへ行ったり、プロにノウハウを教えてもらったりする方が一番近道だと分かりました。

ちゃんとお金と時間を使って勉強しなかったため、売上は段々右肩下がりになってしまいました。

安く済ませてちょっとだけ情報を得る、というやり方を取っていてはいつまで経っても身になりません。短期間で集中した方が身に付きます。

 

 

——今までにやっておけば良かったなと思うことはありますか?

技術より「経営」について学ぶべきでした。

技術よりも経営の方が売上に繋がると思います。

腕が良いからお客さんが来る、と思っているサロンオーナーが多いのですが、実際にお店をオープンするとお客さんが来ないという現実が待っています。

 

——最後に、これから開業する人たちに向けて、一言メッセージをお願いします。

起業するためには勉強をしておいた方が良いです。

勉強せずに、かつお金もかけないのであれば、後から苦労します。
美容業界の廃業率は3年以内で6割と言われているほど厳しい業界です。

それだけ厳しい業界で起業するということは、「狭き門へなぜ自分が入ろうとしているのか」その理由をあげられないのであれば厳しいです。
その理由を考えて起業すべきだと思います。

具体的に勉強すべきことは「集客」と、商品づくりのための「マーケティング」です。

自分が得意なことをメニューにするサロンオーナーが多いのですが、それでは独りよがりになってしまいます。

誰に向けたサービスなのか、ということが非常に大事です。

日本ハンドビューティー協会
〒107-0062
東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山942
電話番号:03-6277-1120
https://www.hand-beauty.com/

 

加藤 由利子

  • ・日本ハンドビューティー協会 代表理事
  • ・青山ハンドビューティ株式会社 代表取締役
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