サロン・整体・エステ・接骨院の開業を目指す人のためのメディアサイト「EGG(エッグ)」

飯塚 あい子さん|「お客さんの素の部分と深く向き合える」店舗を持たない出張という働き方

これから開業するにあたり、「お店を出し、維持していく費用が不安……」とハードルを感じている方もいるのではないでしょうか?

 

「お客様の素が見えるので付き合いが深くなります」

 

そう語るのは、鍼灸業界で15年間働き、昨年(2018年)から店舗を持たずに、出張というスタイルで独立された飯塚 あい子さんです。

店舗が無くても開業できる。そして、出張だからこそのメリットもあると飯塚さんは語ります。店舗で勤務していたときにはなかった出張の醍醐味についてお伺いしました。

 

 

「お店を構えるほうが現実的でなかった」独立前から出張のお客さんが多かった

ーーお店を持たないスタイルで鍼灸の治療を始めた理由はなんでしょうか?

実は独立する当初は、お店を出そうと思っていました。

しかし、今まで働いていた鍼灸のお店で出張も経験していまして、独立にあたりお客様の人数を数えていたら、出張の方が多い状況でした。そのままではお店を開いたとしても週1回ほどになってしまうので現実的ではないと思い、そのまま出張でやろうと思うようになりました。

 

15年以上鍼灸業界で働いていますが、「やめるのであればうちに来てくれない?」とお客様から言っていただくなど、ご紹介で出張のお客様がだんだん増えていきました。

 

お客様の「かかりつけのお医者さん」のような存在になれる

ーー出張ならではの良さはなんでしょうか?

密な関係性を築くことができます。かかりつけのお医者さんに近いような、一番最初に相談する存在として頼って頂けることです。

最初は奥様一人の治療だったものが、旦那様も、お子様も、という形で、家族4人ほどの治療を担当するということもあります。ご家族の大切な行事に呼ばれて行くなど、プライベートの付き合いが増えます。

 

店舗への来院と違い、場所がお客様のご自宅ですので着飾ることもなく、いきなり素が見えるので付き合いが深くなります。

 

ーー逆に、出張のデメリットはどのような部分でしょうか?

収益のことを考えると効率は決して良くないと思います。移動時間もあるため1日何人以上と決めるのは難しいためです。

また天候の影響も受けやすいです。自分の家の近くですとバイクで移動するため冬は寒く、夏は暑いなど、そうした苦労はあります。

当初、出張先は東京と神奈川だけでした。しかし今では遠いところだと埼玉まで行きます。ご依頼を頂くうちに、増えていきました。こうした成り行き任せな部分はありますが、必要として頂けるのであればなるべくお答えしたいと思っています。

 

「1年で、マッサージでは、体力が持たないと思った」鍼灸への転換

ーー鍼灸に興味を持ち始めた理由はなんだったのでしょうか?

小学生のころ、それまではとても元気だったのですがいきなり入院したことがありました。そのとき、子供ながらに健康は当たり前ではないということに気付き、「医療」に興味を持ち始めました。

当時から親にマッサージをしていたこともあり、最初はマッサージの勉強をしていました。

今は鍼灸しか基本的にはやらないのですが、マッサージの資格は持っています。

 

ーーマッサージではなく、鍼灸を選んだ理由はなぜでしょうか?

当初マッサージの資格を取ったのですが、最初の1年でマッサージだけだと体力的に持たないということが分かりました。

以前専門学校にいるときは、鍼灸に対してあまり興味がありませんでした。しかし、知り合いに紹介されて自分自身が鍼灸へ行ったことで、「こんなに鍼灸が体に良いのか」と初めて知り、鍼灸に挑戦しようと思いました。マッサージとは大きく異なる効果が見えたため、面白さを感じました。

 

ーー鍼灸とマッサージではどのような点が異なるのでしょうか?

マッサージはその場では気持ちが良いのですが、2〜3日したら元の症状に戻ってしまいます。

一方鍼灸の場合は根本的に症状が軽減し、その人の生活自体が変わっていきます。例えば生理痛が酷くて薬を飲んでいた方も、薬がいらない状況になりました。

 

あんなに穏やかな顔を久しぶりに見た」ご家族から最期の時まで頼りにされる存在に

ーー鍼灸師になってよかったことはどんなことでしょうか?

生死の堺にいる方に携われたことは、非常に印象に残っています。

奥様が旦那様を看病しており、看病に疲れてしまったため、施術して欲しいというのが最初のご依頼でした。しかしその後は旦那様からも施術の依頼がきました。旦那様は病院ではなく自宅療養をご希望され、いつ入院するか分からない状態でしたので、その方の治療は非常に迷いました。

最終的に旦那様は入院し、亡くなってしまったのですが、奥様から「主人は辛くて笑顔も全然なかったのですが、あんなに穏やかな顔も久しぶりに見たので、鍼灸をやってもらってよかったです」という言葉を頂きました。

 

リスクのある施術でしたが、満足してくださったので、そうした状況まで頼りにしてくれたという事実は嬉しかったです。今でも奥様とは縁があり、治療をさせて頂いています。

 

お客様の不安を事前に汲み取ることでクレームを解消

ーー今まで鍼灸を続けてきて、失敗談はありますか。

鍼灸を始めたての頃は、相手が満足いくような結果まで持っていけないこともありました。

しかし長年やっていると、クレームにつながりそうなことが予想できます。そこを見越して早めに解消することができるので、大々的にクレームになることはなくなりました。

「ここがまだ改善されていないです」という言葉を頂いたときに、現状と改善していない理由、どのような過程で良くなっていくのかの計画を先にお伝えすると、現在辛くても納得していただけます。

 

鍼灸の場合、「体が辛い。今すぐなんとかして欲しい」というお客様が多く、不安を抱えているので、しっかり説明をしないと不満につながっていきます。ですので、不安を汲み取る必要があるということは学びました。

 

距離感が近いからこそ、技術だけでないコミュニケーションが重要

ーー本日はありがとうございました。店舗をかまえるのではなく、これから出張での独立を考えている方に向けてメッセージを頂けますでしょうか。

お客様のプライベートや素の部分、家族関係が見えることが出張の醍醐味です。店舗だとお客様は着飾っているため、素はなかなか見えません。

 

距離感の近さもあり、技術だけではなく、相手とのコミュニケーションも非常に重要です。技術だけ良くてもお客様はついてきません。

 

ご年配で一人暮らしの方などは特に、普段話し相手がいないため会話を楽しみにされています。治療のあと1時間くらい話す方もいるほどです。

こうしたお客様の話の中に症状の原因が隠されていますので、出張においてはとくに会話は重要になります。そうした意識を持っておくことは大切ではないでしょうか。

 

※撮影協力:松下 晃太
※取材・記事協力:宇野 貴子、山口 遼大

 

プロフィール

飯塚 あい子

 

SNSでフォローする